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「時代」を見抜く力
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歴史が繰り返すことはない。しかし歴史のパターンは絶えず繰り返される。
谷沢永一氏が「飛びきりの名著」「渡部氏の最高傑作」と呼んだ『腐敗の時代』と『文科の時代』『正義の時代』の代表的三部作から現代を生きる私たちの教訓となる“今まさに必読 ”の12編を収録。
父は碩学であるとか大教養人とか人に言って頂くことが多い人であったが、私が思うに、父は「直感」の人であった。それもとびきりの直感力の持ち主であったと思う。そしてその背景に膨大な知識があった。今回、久しぶりに本書に編まれた父の最初期の著作集、『文科の時代』『正義の時代』『腐敗の時代』を読んで、ある感動にとらわれた。私の記憶に懐かしいこの三冊には、渡部昇一の殆ど全てがある。人知れず膨大に蓄積された知識が、長い知的鍛錬によって整理され、直感によって新しい光を当てられ、それが表現を求めて堰を切って現れたという趣が、これらの本にはある。英語学の専門書を除けば、その殆どはこの三つの著作から発展、専門化、または進化していったものであるとさえ私は思う。父の核心と思想の根っこはすでにここにあって生涯ぶれる事が無かった。つまり父は著述活動の最初から、何か普遍的なものを掴んでいたとも言える。だからこれらの本は今読んでも新しい。──本書「はじめに」(渡部昇一氏長男・チェリスト 渡部玄一氏)より
本書は、『文科の時代』『腐敗の時代』『正義の時代』の三部作の中から、現代に生きる私たちが熟読玩味すべき珠玉のエッセイを選び、一冊に編集しなおしたものである。いずれも甲乙つけがたい爆発的な力作であるが、本書のように一冊にまとまると、それぞれのエッセイが今まで以上のシナジー効果を発揮しているような感を覚える。これまで別々の場所に納められていた三種の神器を一堂に集めたような単行本に仕上がっていると思う。このポピュリズムの時代に民主政治を衆愚政治に堕落させないためには、また情報過多の時代に情報に振り回されず自分の頭でものを考えるためには、私たち一人一人が教養を深め、常識をより高いレベルに引き上げることが必要であろう。そのためのヒントが満載された、「知の巨人」の三部作が、令和の新時代に甦る意義はすこぶる大きい。──本書「解説」(麗澤大学大学院特任教授・前学長:中山理氏)より
【目次】
はじめに──父のほぼ全てが語られていた出世作の「普遍性」と「新しさ」 渡部玄一
1 腐敗の中の指導者論
2 腐敗の効用──ある時代への葬送曲として
3 騎馬型国家と農耕型国家
4 愛憎の日米関係史
5 公的信義と私的信義
6 タブー用語について──言葉いじりの意味するもの
7 文科の時代──日本民族の可能性
8 日本語について──言霊の視点から
9 手造り文化の時代──百年目のウイリアム・モリス
10 オカルトについて──光が闇になった時代
11 歴史を見る目──進化論は自然科学に非ず
12 義務教育を廃止せよ
解説──今甦る「知の巨人」の三部作 麗澤大学大学院特任教授・前学長 中山 理
渡部昇一(わたなべ しょういち)
1930年10月15日、山形県生まれ。上智大学大学院修士課程修了。ドイツ・ミュンスター大学、イギリス・オックスフォード大学留学。Dr.phil.(1958)、Dr.Phil.h.c(1994)。上智大学教授を経て、上智大学名誉教授。その間、フルブライト教授としてアメリカの4州6大学で講義。専門の英語学のみならず幅広い評論活動を展開する。1976年第24回エッセイストクラブ賞受賞。1985年第1回正論大賞受賞。英語学・言語学に関する専門書のほかに『知的生活の方法』(講談社現代新書)、『古事記と日本人』(祥伝社)、『渡部昇一「日本の歴史」(全8巻)』(ワック)、『知的余生の方法』(新潮新書)、『[増補]決定版・日本史』(育鵬社)、『決定版 日本人論』『人生の手引書』『魂は、あるか?』『終生 知的生活の方法』(いずれも扶桑社)などがある。2017年4月17日逝去。享年86。
訂正のお知らせ
●本書(初版第1刷)の本文に下記の誤りがありました。ここに訂正してお詫びします。
14頁1行目:「神の庭と呼ばれた→「神の庭」と呼ばれた